レッスン8:量子ゲートの拡張

Y・S・Tの位相ゲートと、SWAP・Toffoliゲートで広がる計算の可能性を体験する

量子ゲートの拡張:Y・S・T・SWAP・Toffoli

レッスン4では H・X・Z・CNOT の 4 つを学びました。実は量子コンピュータには、さらにたくさんのゲートがあります。 今回は 位相を操るゲート(Y・S・T) と、Qubit 同士の並べ替え・条件付きゲート(SWAP・Toffoli) を見ていきましょう。

ゲートの新しい仲間たち

ゲート 記号 働き(直感的な意味)
Y ゲート Y Pauli 3 兄弟の 1 つ。X・Z と合わせて「まわる」基本操作
S ゲート S 位相を 90° 回す。Z の平方根
T ゲート T 位相を 45° 回す。S の平方根
SWAP SWAP 2 つの Qubit の「入れ物」を取り替える
Toffoli CCNOT 「もし 2 つの制御が両方 1 なら反転」。可逆な AND を実現

まずは 重ね合わせ状態 |+⟩(= H|0⟩) に Y・S・T を 1 回掛けて、測定確率(棒グラフ)と状態の向き(ブロッホ球) の変化を比べてみましょう。

  • Y は Pauli ゲート:ブロッホ球を x 軸まわりに 180° 回し、|+⟩|-⟩ に反転。
  • S・T は位相ゲート:確率を変えず、ブロッホ球の「経度(位相)」だけを回す。
Tip

見てみよう - Y を選ぶと ブロッホ球の矢印が x 軸の反対側(|+⟩ → |-⟩)に回ります。それでも測定確率は 50%:50% のまま。 - S・T を選ぶと 確率(棒グラフ)は変わらず、ブロッホ球の矢印だけが ずっと向きを回して(位相を回して)いきます。 - 位相回転は 測定には現れないが、Qubit 同士の干渉には決定的に効く のです。

Y・S・T と「可逆計算」のイメージ

X・Y・Z は Pauli ゲート、S・T は 位相ゲート と呼ばれます。 重要なのは、これらはすべて元に戻せる(可逆)ことです。

操作 2 回繰り返すと
X 元に戻る
Y 元に戻る
Z 元に戻る
S Z になる
T S になる

ゲートをかけたら必ず逆操作で戻せる。この「不可逆な計算をしない」性質が、量子計算のルールです。

Toffoli ゲート:2 つで 1 つを制御

CNOT は「制御 1 つ → 標的 1 つ」。Toffoli(CCNOT) は「制御 2 つ → 標的 1 つ」で、 両方の制御が 1 のときだけ標的を反転します。

これは AND(かつ) の機能。古典で欠かせない計算を取り消し可能なまま実現できます。

Tip

見てみよう - |110⟩ で制御が両方 1 なので、標的 qubit2 が 0→1 に反転し |111⟩ になります。 - |100⟩(制御が片方 0)なら何も起きません。お試しください。 - 「2 つの条件が揃ったときだけ動く」操作 = AND の量子版

SWAP ゲート:入れ物を入れ替える

SWAP は qubit0 と qubit1 の状態を丸ごと入れ替えるゲートです。

|10⟩ → SWAP → |01⟩ になる様子を確認します。CNOT 3 回の組み合わせで実現できます。

まとめ

  • Y・S・T:位相や方向を細かく操るゲート。確率は変えずに状態を回転させる。
  • SWAP:2 つの Qubit の状態を入れ替える配線のような操作。
  • Toffoli(CCNOT):2 つの制御が揃ったときだけ反転。可逆な AND
  • 全ゲートはユニタリ=いつでも逆操作で元に戻せる。

次は、実際の 量子回路の読み方・書き方(ベル状態・GHZ 状態)をマスターします。